ストレスも脳の神経を退化させている
一方、現代人は多くのストレスにさらされて、脳が疲れている場合も。『婦人公論』世代なら、将来の不安や介護ストレス、家族問題で悩んでいる人もいるでしょう。実はストレスが過剰になると、脳機能の低下、神経回路の退化の原因になってしまいます。
ネガティブな感情は脳を過活動状態にさせるため、負荷がかかりすぎてダメージを与えてしまうのです。そんなときは、脳をしっかり休めること。休息できれば、脳は本来の機能を取り戻します。
良質な睡眠をとるのはもちろんですが、私がおすすめする休息法は瞑想です。瞑想といっても、座禅を組んでじっとしているような瞑想でなくてOKです。ネガティブな思考を巡らせるのをやめるだけ。
たとえば「食べる瞑想」。テレビやスマホなどを見ながら食べるのではなく、歯ごたえ、香り、舌触りに意識を向けるだけで瞑想状態になります。あるいは、足の裏の感覚や動きなどに意識を集中する「歩く瞑想」、散歩をしながら風や草木のざわめき、鳥のさえずり、川のせせらぎに意識を向ける「音の瞑想」もおすすめです。
塗り絵も効果的。何も考えず塗っている間は、ある種の瞑想状態に入っています。脳が休まると、ネガティブな感情が湧きにくくなり、その結果、神経回路も退化しなくなるという好循環が生まれるのです。
最後にもうひとつ、面白い実験をご紹介しましょう。75歳から80歳の男性グループに、「20歳若返った自分」になって、1週間合宿をしてもらう実験です。着る服も、室内に用意した家電類も20年前と同じもの。テレビ番組や新聞のニュースも当時のものを用意し、20年前の話題しか話さないようにしてもらいました。
実験の前と後で認知機能や体力を調べたところ、参加者たちの記憶力を含む認知機能、聴覚、視覚などの感覚機能、体力などが若返っていたのです。
これは実年齢よりも「主観年齢」、つまり「自分は何歳ぐらいの気持ちで過ごしているか」が脳機能や身体機能に影響することを示しています。「若く見られなくてもいい」「私はもうおばさんだし……」という諦めは危険信号。「老いは気から」です。
まずはメイクを楽しんだり、明るい色の服を着たりと、できることからやってみましょう。続けるうちに、やる気がむくむく起きて、心も脳も若々しく保てるはずです。