昭和の時代の人間臭さは素晴らしい

給食が大好きな甘利田のように、自分が好きなことを「好き」とストレートに言えて、精一杯人生を謳歌できる人は羨ましいと思います。たとえ滑稽な姿をさらけ出したとしていても…。この作品を観てくださる方々への「好きなものを好き」と表現できる勇気や、楽しいと思った感情を爆発させる思いをいつまでも忘れないでいただきたい、というメッセージも込められています。

僕は今作で描かれている1980年代や、昭和の時代も大好きです。

SNSが全盛の現代では、相手と向き合う時、直接顔を見ない状態でやりとりが可能ですが、昔はちゃんと顔を合わせて話すことで、自分の感情をしっかりと相手に届けられました。だからこそ、時にはぶつかることもありますが、物事を進めていく上でより見えてくる個々のチャーミングな人間臭さが感じられる、そんな素晴らしい時代だったと思います。

今の子どもたちは学校に行ったらマスクをつけるのが当たり前で、友達の顔もちゃんと見たことのない方がたくさんいるんですよね。そんな中で唯一、給食の時間はマスクを外し、顔が見える。でも、今は「黙食」がニュースタンダードなので、会話を楽しみながら食べることもできない。

今作には和気あいあいとクラスで給食を味わうシーンが出てきます。

今回は生徒役を演じてくれている子供たちと、みんなで楽しく会話しながら撮影したのですが、現実社会でも、早くみんなで楽しく給食を分かち合って食べることができるようになるといいなと感じます。給食って、思えば子どもにとって人生初めての会食、なんですよね。

コロナ禍での撮影だったのでいろいろな制約があって、マスクを二重に付けて、本番以外は一切声を発さないようにして、窓は全開にしていた状態。ひと夏、子供たちと撮影するということで、まず向き合うことから始めました。
本気で笑えて本気で悔しがる。真剣に取り組むことで、お客様に喜んでいただける作品になるからと。そのために一緒に闘いましょう、と最初に本読みで集まった時に生徒の皆様にお話させていただきました。

僕も13歳頃から芝居を始めたので、彼らの気持ちはすごくわかります。さまざまなことを乗り越えてくれたみんなの笑顔が大好きで、一緒に頑張ってくださって、僕にとっても誇りに思える大切な時間を過ごすことができました。

自身でコーディネイトした衣装で(撮影=初沢亜利)