(写真提供◎photo AC)
災害や事故、介護や相続など、人生には不測のトラブルや、避けられない困難が訪れます。とはいえ、気軽に聞ける弁護士や税理士が身近にいるとは限りません。専門的な知識を得ることで、冷静な判断で被害を減らしたり、計画的に備えたりすることができます。ジャーナリストとして長年さまざまな現場を取材しているファイナンシャルプランナーの鬼塚眞子さんに、暮らしに役立つ豆知識を聞きました。第18回は「老後の年金について」です。

前回 「老後が不安だから定年後も働きたい、一方で仕事をすると年金が減る? シニアの仕事選びの注意点」はこちら

目次
年金詐欺
 ・《未払い年金詐欺》
 ・《個人情報不正入手》
 ・《年金詐欺が狙われる日?》
平均年金受給額
老後夫婦二人の収支

年金詐欺

シニアにとって年金は生活の基盤となるものです。年金に関する情報収集は大切ですが、年金を狙った振り込め詐欺が発生していることは、ご存じでしょうか?

一般的に振り込め詐欺は、子どもや孫になりすました犯人から「事故を起した」「取引先などに迷惑をかける」と連絡があり、その後、何人もの登場人物が現れて、誘導されているうちに、だまし取られていたというシナリオです。最近では手口も巧妙になって、行政の担当者役一人だけが登場し、心理的揺さぶりをかける振り込め詐欺も行なわれています。

実際の手口の一例を紹介しましょう。

 

《未払い年金詐欺》

ある昼下がり、年金事務所の職員と名乗る犯人から、「一部未払いの年金があることが発覚し、振り込ませていただきます。ただし、払い戻しには期限があり、急で申し訳ありませんが、本日の午後3時までです。手続きをしないと、今後、年金は受け取れなくなります」との電話がかかってきました。その際、「ATMで受付番号を入力する必要があります。どこのATMを利用しますか?」と聞かれたそうです。一見、親切そうに聞こえますが、これが犯人の作戦なのです。

犯人は「古いATMでは対応できない機種もある」と、被害者にあらかじめ伝えます。続けて「受付番号を入力できないATMの時は、近くの**のATMに行ってください。そこなら対応できます」とATMの場所を案内しますが、そこは無人ATMなのです。

当然のことながら、受付番号を入力できるATMなどありません。しかし、「ほかのATMならできる」と事前に言われている被害者は、犯人から指定されたATMに駆け込んでしまうのです。事前に聞かされていた「振込み金額の画面にきたら、受付番号を入力すると、画面が切り替わります」という嘘を信じて、入力します。この受付番号こそ、振込み金額だったのです。

冷静に考えれば、おかしい話だと気がつきます。しかし、「年金が中止になる」「未払いの年金が受け取れない」「ATMが使えない」といった揺さぶりが重なると、冷静な判断ができなくなります。

ちなみに年金の老齢基礎年金、老齢厚生年金のどちらも、受給停止は、受給者が自分で申し出をして、所定の手続きを経て行なわれるものです。こうした電話などがあった場合は、相手方の名前や連絡先などをメモして警察に通報するか、年金事務所まですぐに連絡を。