「死=生きる」ということ

この作品に出会う少し前に、お友だちと行くお蕎麦屋さんでお寺のご住職とお話ししたんです。そこで「死ぬってどういうことなんでしょう」って聞いてみたら、ご住職はしばらく黙ってから、「生きることです」と言われて。そのとき私、ハッ? と思っていたら、「死ぬまでの間をどう生きるかが、死ぬということなんですよ」とご住職がおっしゃったんです。つまり、死=生きる。

この映画はそれを伝えていると私自身感じましたし、皆さんにもそういうふうに見ていただけたら嬉しいなと思います。命は人が決めるものじゃなくて、いただいた命を自分自身で生きなきゃいけない。これはとても大事なことだと思います。

先日、出来上がった作品を観たんですが、これからどのように生きようかな、死ぬまでにどれだけ楽しいことや素敵な人に出会えるかな、という思いがまた新たに湧いてきました。

この作品に描かれていること――国家が人の生き死にに関与すること――は、この先の日本で、絶対に起こらないとは言えませんよね。世界は今、すごいサイクルで回っているから、もしかしたら何十年後かにはあるかもしれない。でも、絶対にあってはいけないと思うんです。

監督で脚本も書いている早川千絵さんは、とても丁寧に映画づくりをする方。デリケートな内容の映画だけに、疑問を感じたシーンに関しては私もお話しさせていただきました。その日撮影した分を見直して、ときには「明日、撮り直してください」とお願いすることも。監督とは35くらい年齢差がありますが、対等に率直に語り合い、内容を深めていくことができたと思います。

1つの映画作品を作るのは、スタッフもキャストも山の麓に集まって、「みんな揃った? じゃあ登ろう!」と、みんなで山を登るようなものです。『PLAN75』という険しい山を、力を合わせて登りきり、いい作品が生まれたなという達成感があります。