興味が湧いたらためらわずポンと突き進む

人はときには喧嘩することもあるだろうし、悲しいことも楽しいことも、すべて「生きる」こと。でもなるべく嬉しいことがいっぱいあったほうがいいじゃないですか。そのためにも一日一日を大切にしないとね。そう思って過ごすようになりました。

趣味や旅行、友だち付き合いなどを思う存分楽しめるようになったのは、50代半ば以降。長年出させていただいた『男はつらいよ』が終わった頃かな……。13歳で童謡歌手としてデビューして、その後SKD(松竹歌劇団)に入団、そして女優と、ずーっと仕事人生でしたので。

50歳で結婚して横浜で暮らすようになりましたが、北海道にも家を持ち、年に4ヵ月ほどはそこで過ごしています。北海道では、仕事とはまったく関係のないお友だちも増えて、20年くらい前から一緒に旅行に行くようになったの。みんなで旅行費用を積み立ててあちこち行くのが、とっても楽しいです。

お弁当を買う役、移動手段のチケットを手配する役、お水を用意する役など、分担はあみだくじで決めるんです。もちろん私も、くじで当たったらその役目を果たします。仕事から離れて友人たちと遊ぶのは、本当に贅沢な時間だと思っています。

齢を重ねて、せっかく時間に余裕ができたんですもの。なにかに興味が湧いたら、ためらわずにポンと突き進みます。「私にできるかしら」なんて思わず、フットワーク軽く「試してみよう」と飛び込むのがいいと思っているので。趣味で続けている陶芸も、絵も、そんなふうにして始めました。絵は、藤竜也さんと仕事でご一緒したとき、藤さん絵がとてもお上手なので教えていただいて。一時、ずいぶんハマったときがありました。

女優としていつでも要望に応えられる自分でいるためには、身体も心も柔らかくしていたいなと思っています。そうでないと、いろいろな役に入れませんから。

身体に関しては、「ウォーキングとストレッチを毎日、ときには水泳を」がモットー。さぼる日もあるけれど、目標を立てると奮起できます。心も同じ。柔軟な心でいるためには、常に好奇心のアンテナを立てて、億劫がらずになんでも試してみることが大事なんじゃないかしら。

「私にできるかしら」なんて思わず、フットワーク軽く「試してみよう」と飛び込むのがいいと語る倍賞千恵子さん