日々の何気ない暮らし「生きる」を大事に
夫(作曲家の小六禮次郎さん)は以前、家事をなさらない方でした(笑)。でも、やはり年齢がいくといろいろ大変になるから、家事も助け合わないとね。ここ数年、食後のお茶入れ、洗い物などに参加してくれるようになりました。彼が作るトマト入りのお味噌汁なんて、絶品ですよ。
コロナ以前には、よくお友だちも我が家にごはんを食べにきていました。人と接するといろいろ新しい情報が入ってくるし、精神が活性化しますよね。話を聞くことで、新しい世界が広がったり、自分も変わっていける。ときには違う方向に一歩踏み出すきっかけにもなります。
私は人が大好きだし、年齢がいけばいくほど、友だちの存在が大事になる。人によっては、歳を重ねると人付き合いが億劫になるかもしれないけれど、数を増やすのは難しくても、深めていくことはできるんじゃないかしら。
食べる、友だちや夫と話す、女優として表現する、歌う――そのすべてが、私にとって「生きる」こと。たとえば夫とは、朝起きると必ず目を見て「おはよう」を言い、寝る前は「おやすみ」。そういう日々の何気ない暮らしを大事にすることが、「生きる」を大事にすることなんじゃないかな。最近、そんな気がします。
北海道にいるときは、よく空を見るんです。毎日、夕日を見ては「自然ってすごいなぁ」と思うし、1秒たりとも、同じ景色、同じ空はない。だから、一瞬を見逃さないようにしないと。そして感動したら、心が柔らかくなって動くじゃない? 「うわぁ、きれいだなぁ」と思ってなぜか飛び跳ねたくなる日もあれば、涙が出ちゃう日もある。そうやって感動できるのはすばらしいことだし、大事なんじゃないかな。
だって、生きているんだもの。ロボットじゃないんだし、切ったら血が出る。だから、何歳になってもアンテナを立てて、日々感動し、やりたいことがあったら思い切って飛び込んで。でも、そんなに無理して一所懸命やらなくたっていいのよ。「なるべくそうありたいな」という思いがあれば、きっと、素敵な人と出会え楽しい人生を生きていけるんじゃないかなぁー。
それは、75歳から自らの生死を選択できる制度 ――果たして、是か、非か
(カンヌ国際映画祭でカメラドール スペシャル・メンション受賞)は6月17日より新宿ピカデリーほかにて全国公開