「自分が政治家なんて無理」と

酒井 なぜ、地方議会では女性議員が出にくいのでしょう。

三浦 ひとつには、イエ制度の影響です。地域によっては、町内会の決定が「一家に一票」なので、世帯主の男性がその家全体の意思表示をする慣習が残っています。その意識が選挙にも繋がっていて、「うちは全員**さんに」などと、個々が自由に投票できない雰囲気が生まれてしまう。

また、議員になるのは地域の名士・名家の出身というような意識もあり、移住してきた人や「嫁」の立場の女性が出にくい土壌があります。

酒井 家長となると、どうしても男性の意見になってしまう。

三浦 はい。その点、都市部は仕事を求めて移住してきた人が多いため、土地のしがらみより自分たちの生活に関わる問題に取り組むかどうかで投票先を選ぶ傾向があり、女性議員も出てきやすいと言えますね。

酒井 日本で女性議員が増えない理由として、女性たちの自信のなさというか、「自分が政治家なんて無理」と尻込みする傾向も強いように思います。

三浦 政治や経済などパブリックな世界は、男性が作り上げてきたものなので、そこに進出した女性はいやおうなく異分子になるというのが現実でした。そこで自分らしくあろうとすれば、激しいバッシングやハラスメントの対象になりますし、周囲に合わせようとすれば行動や思想を男性化しなければならない。そういった状況がまだあります。

<後編につづく

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