左から、政治学者の三浦まりさんとエッセイストの酒井順子さん。『婦人公論』を創刊号から振り返り、その時々の女性たちの活躍に話が弾んで(撮影:洞澤佐智子)
〈6月15日発売の『婦人公論』7月号から記事を先出し!〉
日本の国会議員の女性比率は衆議院で9.9%と、世界190ヵ国中166位という現状(※衆議院ホームページより。2022年5月30日時点)。7月に行われる参議院議員選挙を前に、なぜ世の中が盛り上がっていないのか、そして女性たちの思いを国政に届けるにはどうしたらいいか、酒井順子さんが政治学者の三浦まりさんと語りました(構成=山田真理 撮影=洞澤佐智子)

<前編よりつづく

学生たちのジェンダーギャップ観

酒井 それ(編集部注:女性議員が出にくい状況)を打開するには?

三浦 たとえばアメリカでは、いわゆるトップ大学の女子学生比率を5割まで上げる努力を30年以上続けた結果、やっといま議員や企業の経営者に女性が増えてきたところです。日本でも、Z世代と呼ばれる若者たちの意識は変わってきています。5年ほど前までは、私の授業を受ける学生たちにも、「日本にはもう性差別なんてない」「女性のほうが優遇されている」と考える人が多くいたくらいです。

酒井 「レディースデーはずるい」「女性専用車両は男性差別だ」などの声もよく耳にします。

三浦 しかしアプローチを変えて、「男性(女性)として《抑圧》されたことはありませんか?」と聞くと、「男の子だから泣くなと言われて嫌だった」「男性が育休を取りにくいのはおかしい」といった反応が山ほど出てくる。

そこで「なぜそういう社会になっているのか」という構造を解説し、ジェンダーギャップ(男女の社会的・文化的な格差)指数が「世界156ヵ国中120位と先進国で最低レベル」といった否定できない数値を見せると、そこで初めて「ああ、これが《差別》なのか」という認識の転換が起きるんです。

酒井 なるほど!

三浦 21年の東京オリンピック・パラリンピックにまつわる森喜朗組織委員会会長(当時)の「わきまえない」発言は、決定打でした。「あんな非常識なことを平気で口にするおじいちゃんが、いまだ大きな力を持っている」という日本の現実を目の当たりにして、「これはヤバイぞ」と学生たちも思ったみたいです。(笑)

酒井 自民党政権に関しては、学生たちはどんな反応なのでしょう。

三浦 若者がアベノミクスに期待していた時期もありますが、森友問題やコロナ対策でだいぶ空気は変わりました。アベノマスクに対しては怒りを、岸田政権には安倍政権の負債を総括しない点から失望を示す学生が多いようです。

だから本当は、野党がしっかりしていたら与党には相当厳しい選挙になると感じています。というのも、これまで何年も学生を見てきた結果、若者の反応と選挙結果は合致する傾向があるんです。