おばあちゃんシャチの存在によって、群れの生存率が高められているのである(写真提供:photoAC)
歳を取ることについて、どちらかというとマイナスなイメージを持っている方は多いのでは。しかし「老いることは、生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略である」と、静岡大学大学院農学研究科教授の稲垣先生は話します。人気エッセイストとして、著書も多数執筆している先生が、注目する生きものを取り上げながら、その「老い」について考えてきます。今回取り上げるのは「シャチ」です。

3種類の生物だけが閉経する

多くの生物は生殖能力を失うと、その役割を終えたように死んでいく。つまり、老いるより前に寿命が尽きて死んでしまうのだ。

しかし、人間の女性は、閉経後も長生きをする。人間のように、老いることのできる生物は珍しい。

地球上で、閉経をする生物は、人間と、シャチとゴンドウクジラの3種類だけである。それにしても、どうして、閉経して繁殖能力を持たないおばあちゃんシャチが長生きをするのだろうか。

最近の研究によって、このおばあちゃんシャチが存在する理由が解明された。おばあちゃんがいない場合と比べて、おばあちゃんがいる群れは、孫の生存率が高まるというのである。そして、おばあちゃんシャチが死ぬと、その後、孫の生存率は低下するという。