おばあちゃんシャチに助けられて
海は危険がいっぱいである。おばあちゃんシャチの豊富な経験と知恵が群れを正しく導いていく。そして、母親世代のシャチに子育ての知識を伝え、家族の世話をする。こうしておばあちゃんシャチの存在によって、群れの生存率が高められているのである。
特に厳しい環境では、おばあちゃんの存在が重要になるという。
こうして、おばあちゃんがいる集団が生き残ったことによって、閉経後も長生きをするという特徴が、有利となって選択されてきたのである。
シャチはおばあちゃんをリーダーとして、メスを中心とした群れを作る。
シャチのメスは四十歳くらいになると閉経をして子どもを産まなくなる。しかし、その後、九十歳くらいまでは長生きをするという。驚くことに、閉経した後のほうが、長く生きているのである。
一方、群れを作らないオスは五十歳くらいで死んでしまうという。生物にとって、「長生き」も生存戦略である。役割があるからこそ、「長生き」を与えられているのである。
※本稿は、『生き物が老いるということ――死と長寿の進化論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
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どうして人間以外の生き物は若返ろうとしないのだろう?
イネにとって老いはまさに米を実らせる、もっとも輝きを持つステージである。人間はどうして実りに目をむけず、いつまでも青々としていようとするのか。実は老いは生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略なのだ。次世代へと命をつなぎながら、私たちの体は老いていくのである。人類はけっして強い生物ではないが、助け合い、そして年寄りの知恵を活かすことによって「長生き」を手に入れたのだ。老化という最強戦略の秘密に迫る。
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