端午の節句に食べられる柏餅。餅を包むための葉は他にもありますが、なぜカシワが選ばれたのでしょうか。理由の一つとして、カシワはめでたい植物とされているそうですが――(写真提供:photoAC)
歳を取ることについて、どちらかというとマイナスなイメージを持っている方は多いのでは。しかし「老いることは、生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略である」と、静岡大学大学院農学研究科教授の稲垣先生は話します。人気エッセイストとして、著書も多数執筆している先生が、注目する生きものを取り上げながら、その「老い」について考えてきます。今回取り上げるのは、縁起が良いことの象徴である「カシワ」です。

めでたい植物として使用されるカシワ

端午の節句には、柏餅を食べる。

カシワは葉が大きく、抗菌作用もあることから、餅を包むにはちょうど良い。

しかし、カシワでなくても、他にも葉がある。その中で、カシワが用いられたのには理由がある。

じつは、カシワはめでたい植物であるとされている。それはどうしてだろうか。

落葉樹であるカシワは、秋になると葉が枯れる。しかし、冬になっても、他の木々のように葉が枯れ落ちることはない。枯れ葉はずっと、枝についたままである。

しかし春になって、新しい芽が出てくると、それを見届けたように葉を落とすのである。命をつなぐように、枯れ葉が去っていくことから、めでたいとされたのである。