結婚披露宴などで使われる「偕老同穴(かいろうどうけつ)」。夫婦の契りが堅いことを表した言葉ですが、同じ名前をもつ生物がいます(写真提供:photoAC)
歳を取ることについて、どちらかというとマイナスなイメージを持っている方は多いのでは。しかし「老いることは、生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略である」と、静岡大学大学院農学研究科教授の稲垣先生は話します。人気エッセイストとして、著書も多数執筆している先生が、注目する生きものを取り上げながら、その「老い」について考えてきます。今回取り上げるのは、「カイロウドウケツ」です。

結婚式での常套句、その由来は?

「偕老同穴(かいろうどうけつ)」という言葉がある。結婚披露宴などで使われるこの言葉は、「偕(とも)に老い、穴(けつ)を同じうせん」と読む。

つまり、「生きては共に老い、死んでは同じ墓に葬られる」という意味で、夫婦の契りの堅いさまを意味する言葉である。

じつは、「偕老同穴」という名前の生物がいる。カイロウドウケツは、カイロウドウケツ科の海綿動物である。カイロウドウケツの体は細長い円筒状でかごの目のような骨格を持つ。そして、その中にドウケツエビというエビが、暮らしているのである。

ドウケツエビは、カイロウドウケツが食べ残したエサなどを食べて、カイロウドウケツの体の中を清潔に保っている。そして、ドウケツエビはカイロウドウケツのかごの目のような構造の中で暮らすことで、天敵から身を守っている。つまり、ドウケツエビとカイロウドウケツは、共生関係にあるのだ。