死ぬまでカイロウドウケツの中で暮らすドウケツエビ
ドウケツエビは、幼生のうちにカイロウドウケツのかごの目の中に入ってくる。しかし、そのかごの目の中で暮らしているうちに、ドウケツエビは大きく成長し、カイロウドウケツの中に閉じ込められてしまうのだ。
もっとも、カイロウドウケツの中は快適だから、わざわざ危険な外に出る必要はない。そのため、カイロウドウケツから出られなくても、まったく問題はないのだ。
ただし、たった一匹では子孫を残すことができない。そのため、ドウケツエビは、雌雄がペアになってカイロウドウケツの中で暮らしている。まさに死ぬまで共に暮らす「偕老同穴」なのだ。
もともとは、このエビが「偕老同穴」と呼ばれていたが、いつしか海綿動物のほうがカイロウドウケツと呼ばれ、エビはドウケツエビと呼ばれるようになった。
※本稿は、『生き物が老いるということ――死と長寿の進化論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
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どうして人間以外の生き物は若返ろうとしないのだろう?
イネにとって老いはまさに米を実らせる、もっとも輝きを持つステージである。人間はどうして実りに目をむけず、いつまでも青々としていようとするのか。実は老いは生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略なのだ。次世代へと命をつなぎながら、私たちの体は老いていくのである。人類はけっして強い生物ではないが、助け合い、そして年寄りの知恵を活かすことによって「長生き」を手に入れたのだ。老化という最強戦略の秘密に迫る。
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