圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第25回は「退団と『形見分け』」のお話です。
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
(写真提供◎越乃さん 以下すべて)
宝塚の「形見分け」という文化について
「形見分け」という文化が宝塚にはあります。
宝塚の「形見分け」とは、退団の時に自分の使っていた舞台用品やアクセサリー、稽古場で使うものや、着物、私服などを仲間に譲っていくことです。
私もいろんな方から頂いてきました。
「形見分け」でいただく舞台のアクセサリーなどは、
オーダーの物だったり、一点ものだったりと貴重な物が多いので、それぞれに思い出が詰まっています。
天海祐希さんからはお着物を頂きました。
「日本物が来たら退団する!」とまで言い切って着物を毛嫌いしていた愚か者には、
もったいない贈り物でした。
そして、のちに何度もやってきた日本物のお稽古で、そのお着物は大活躍しました。
真琴つばささんから頂いたキラキラカフスボタンは、愛用しすぎて何度も直しながら使ったものです。
上級生がオーダーで誂えた舞台用の新品の靴をもらったこともありました。
それまでは劇団に支給されていた靴を履いていましたが、
外注の靴はこんなにも足が痛くないのか!と感動したことを覚えています。
いつか私も自分の足型をとってオーダーできるように頑張ろう! と、励みになりました。
プライベートで使用する物も頂きました。
洋服をはじめ、ベルトや帽子なども。
リーゼントを作らせたら右に出る者はいない!とまで言われていた上級生からの「形見分け」は、リーゼントをつくる必須アイテム、ヘアスプレーの「VO5」でした。
退団後は、ビジュアル系バンドではない限り使うことのないであろうこのハードなスプレー。
さすがその方らしい!と大変感動し、ありがたく使わせていただきました。
達人からはVO5だけではなく、リーゼントの技も頂きました。