形見分けをいただくことは、送り出すということ

退団者からのさまざまな想いを引き継ぎながら、
こうして宝塚の伝統は受け継がれていきます。

私も2013年に退団する時、男役仕様の物は退団してからは必要ないと思い、全部下級生に渡してきました。
娘役なのにカフスボタンをもらってくれた子がいて、
「自分で使うの?」と聞いたら、
「思い出に」と!
なんと可愛らしい発言なんだと、柄にもなくキュンとしたのを覚えています。(笑)

舞台用の靴は、昨年退団した後輩の珠城りょうさんに渡してきました。
そう、自分が上級生になってオーダーして作った靴です。
退団後、観劇に行った時に、
「りゅーさん!これこれ!」と、その靴を履いているのを見せてくれました。
どんな形でも繋がっている気がして、嬉しく思いました。

退団する人から形見分けをいただくということは、送り出すということです。
基本的に退団発表は集合日にあります。 
集合日とは、新しい作品を作る稽古の第一日目の顔合わせのことです。
退団を公表する集合日までは、退団は基本的にシークレット。
ですから集合日には退団者がいるのかいないのかドキドキしたものです。

誰も退団者がいない公演の時はホッとしていました。
思わぬ人の名前が呼ばれるとざわついたり、 
ショックのあまりその場で泣き声が聞こえることも…。
やはり仲間が卒業するというのは寂しいものなのです。