殺りくが繰り返される中、笑わせてくれる大泉の存在

大泉版の頼朝はろくにおぼえていない豪族に向かって「今まで黙っておったが、ワシが一番頼りにしているのは実はおまえなのだ」と調子の良いことを言い、味方にした。笑わせてくれた(第4話)。

かと思ったら、愛妾の亀(江口のりこ)に鼻の下を伸ばし、それを知った政子(小池栄子)が亀の住まいをぶっ壊してしまうと、「ここまでやるかぁ…」と茫然。やはりユーモラスだった(第12話)。

一方で自分を支えてくれた大豪族・上総介広常(佐藤浩市)を謀殺。広常に非はなく、御家人たちに恐怖心を植え付けるのが狙いだった。自分に逆らう輩を出さないためのスケープゴートだ。広常は梶原景時(中村獅童)に斬られたあと、頼朝に助けを求めるような素振りをしたが、頼朝側は無表情。目は冷めきっていた。恐ろしかった(第15話)。

大泉版の頼朝は見る側を笑わせたり、震えさせたり。並みの俳優が演じたら、広常謀殺のあとに笑わせるのは至難のはず。また、殺りくが繰り返されたので、見る側を和ませる大泉の存在がなかったら、心胆を寒からしめる物語になっていたかも知れない。

もちろん、三谷幸喜(60)による脚本も出色。まず登場人物のキャラクター設定が抜群だった。

奥州に匿われた源義経(菅田将暉・左)を尋ねた義時(小栗旬・右)