サラリーマンとしては新人の新町に苛立ちながらも何かを教えられている深沢塔子(左・芳根京子)

引退したアスリートたちが輝くためには

では具体的に、引退したアスリートは何をすればいいのか? 

具体的な道筋について、世界陸上銅メダルリストの元ハードル選手・為末大さんはユニークな提案をしていました。

「アスリートならみんな、厳しい練習を重ね、試行錯誤しながら身体を探り、頂点をめざしてきた。そのための感覚も磨いてきたはずだ。そうしたアスリートの身体は、『感覚センサーの集積物』だと言うこともできる。たとえば、僕は足の裏の感覚にそれなりの自信を持っている。靴を履いた状態で小さな石を踏んでも、すぐにその感触を感知できる。トレーニングを重ねていく過程で、身体を探ってきたからだ。身体のセンサーは鍛え上げられ、ずいぶん繊細になった。ほんの少しの変化も、即座にとらえられるような鋭さが備わった」(『「遊ぶ」が勝ち』為末大著・中公新書ラクレ)

研ぎ澄まされた独特な身体感覚を持つアスリートが、「ボディ・センスにものすごく長けた人間として、その能力を武器にできないだろうか」「例えば教育プログラムの開発や新商品開発の現場に携わったり、医学の研究現場に情報を提供する等、スポーツを体験した者だからこそ、これまでにない形で社会にインパクトを与えられる」(同書)。

スポーツ選手の引退は20代~30代と早い時点で訪れ、その後の人生のほうがはるかに長い。

レースやゲームのことで頭がいっぱいだった選手時代から、別の人生へ、いかにシフトしていけるか。

悩んでいるアスリートたちが、この社会で輝くためには何が必要か。

多くの一般人が「セカンドキャリア」問題を理解することによって、受け皿も大きく広がるはず。だからこのテーマが、人気の日曜劇場という枠でドラマ化される意義はとても大きいのです。