1頭1頭、個性を持った存在として見えて
ここからが菊池さんら研究者の登場だ。
マナティーの尾びれの付け根に加速度、水深、水温を記録する行動ロガーと、水中マイクで音響を記録する音響ロガー、そして、大まかな位置がわかるように発信器を取り付ける。こういった機器のおかげで、マナティーたちが見通しのきかない水中で何をしているのか手がかりが得られる。
またトラックの荷台に載せて湖まで運び、水の中にリリース。捕獲からここまで、20分から25分程度だった。
ぼくはここに3日間留まり、結局、1日に1頭ずつ、オス、オス、メスの3頭の姿を見ることができた。
2頭目のオスは、8歳、体長198センチ、体重126.5キロと、少し小ぶりだった。3頭目のメスは、5歳、182センチ、102キロ。一度、マナウスの国立アマゾン研究所で飼育されていた時期があり、保護された町の名前を取って、イランドゥーバ(Iranduba)と呼ばれていた。
それぞれ体格だけでなく、顔つきも違っている。また、お腹にある薄ピンクの模様は本当に特徴的で、一度見ておけば、別のものと間違う余地はないと納得できた。「アマゾンマナティー」という種の名前で捉えていた存在が、1頭1頭、個性を持った存在として見えてきた瞬間でもあった。
菊池さんは、日本では数少ない(世界でも決して多いとはいえない)、マナティー研究者だ。ブラジルの国立アマゾン研究所と共同研究する形で、アマゾンマナティーの生活について調べてきた。