アマゾンマナティーをめぐる概要
菊池さんに教えてもらった、アマゾンマナティーをめぐる概要はこんなふうだ。
まず、水生哺乳類のカイギュウ類には、ジュゴン科とマナティー科の2科があり、そのうち、現生のジュゴン科は1種だけなのだが、マナティーには、ウェストインディアンマナティー(アメリカマナティー)、アフリカマナティー、アマゾンマナティーの3種類がいる。
カイギュウ類の際立った特徴は、地球上で唯一の草食性、植物だけを食べる水生哺乳類だという点だ。アマゾンマナティーはアマゾン川の固有種で、やはり植物だけを食べている。
口のまわりに生えているひげは、とても鋭敏な感覚器官だ。ごわごわした短毛で、食べ物を区別したり、何か気になるものがあったら触って調べたりする。
国立アマゾン研究所で保護されているマナティーの採食シーンを見ていると、この口ひげがある部分の左右両サイドがぽっこりと盛り上がり、指のような動きで食べ物を掴んだりかき込むような動作が見られた。高感度の感覚器官を備えた器用な口だと感じた。
さらに解剖学的な特徴としては、横隔膜が体の腹側と背側を区切るみたいに入っていて、背側に肺がある。つまり、酸素ボンベを背負っているような形になっている。肺がその位置にあることをうまく使って浮力調節するともいわれている。
尾びれは、丸い。ジュゴンはイルカのように切れ目が入って二股になった尾びれだが、マナティーの尻尾には、切れ目がなく、しゃもじのようにまん丸だ。ジュゴンは完全な海洋適応種なので、尾びれは速く泳ぐのに適応している。
一方で、マナティーは種によって海水でも淡水でも暮らし、浅い場所や狭いところに入っていくことも多いので、小回りをきかすほうがよかった、というふうに説明される。