年齢差があることがプラスに

静香さんの言葉には多くの困難を乗り越えてきた人の重みがある、と久美子さんは言う。

「同年代の女友だちとの話題は、家族の話や夫のグチが主。日々繰り返される堂々巡りの会話に、私自身も先が見えなくなっていました。でも、子育てや夫婦関係の悩みなども経験済みで、今は自分の人生を生きている静香さんに『家族といられるって、いいね』とさらっと言われると、そうだなと思って自然とグチも引っ込むんです」

そんな静香さんは、「死ぬ前にしたいことリスト」を作り、今は端からそれに挑戦中だという。

「茅ヶ崎での一人暮らし。各種のマリンスポーツやゴルフ。以前からの仕事を続けつつ、興味があった各種バイトなど。手を広げすぎて、自分でも混乱しています(笑)。でも、60歳を過ぎたら中途半端でも失敗してもいいから何でもやってみようと思って」

そう静香さんが言うと、久美子さんが大きく頷いた。

「本当に静香さんはじっとしていない(笑)。でもその姿を見て、私もやらなきゃ、50歳ならまだいろんなことに挑戦できる! と思うんです。ママ友と子育ての会話だけをしているときは、自分が自分じゃないようでどこか息苦しかった。でも今は、好きな時に砂浜に行き、冬でも海に入って、富士山を拝んで、友だちと遊んで、鎌倉に通勤して。ああ、やっと自分を生き始めたと思っています」

ママ友は同世代の似たような状況にある人が集まるため、はみ出すことをためらわせる同調圧力がある。

久美子さんにとって、母親としてではなく、自分自身の気が合う友だちを見つけるのには、年齢差があることがプラスに働いた。

「御朱印集め、遠出しての贅沢ランチ、葉山観光など、私は免許がないので、久美ちゃんに車で連れて行ってもらえるのがありがたい。知り合ってまだ2年ですが、趣味も合う、今一番大事な友人です」と静香さん。

同世代の友だちも頼りになるが、ついどこかで張り合ったり、境遇を比べたりしてしまいがちだ。その点、年の差がある友人は自然体で風通しのいい距離をとりやすいのかもしれない。

ときには姉妹のように、ときには人生の先輩後輩として、ときには世代を超えた同志として支え合う。そんな年の差フレンズは、心の垣根を取り払えば何歳からでも作ることができると感じた。