彬子女王殿下(右)と酒井順子さん(左)
浮世絵や歌舞伎など、美術や伝統芸能だけが「日本文化」ではありません。皇族というお立場にあり、さまざまな文化に触れてこられた研究者の彬子女王殿下に、その真髄を酒井順子さんが伺います。(構成=山田真理 撮影=三浦憲治)

<前編よりつづく

浮世絵はどういうふうに見るか

酒井 彬子さまは日本美術の研究者としても活動していらっしゃいます。きっかけをお聞かせいただけますでしょうか。

彬子女王殿下(以下敬称略) わたくしはもともと大学でスコットランドの歴史を学んでおりまして、英国のオックスフォード大学へ留学したのも研究のためでした。当時、学部に所属している日本人はわたくし一人。ですから、政治、経済、歴史、文学など、日本に関することは「アキコに聞け」となってしまいました。

酒井 それは大変なことに……。

彬子女王 でも英国では、理系の方でもシェイクスピアの話ができますし、オペラやクラシックのコンサート、バレエなどを日常的に楽しんでいる方がたくさんいらっしゃる。

そのため、日本にいたら「それは専門ではないのでわかりません」と言えたことが、海外では「なぜ、自分の国のことなのにわからないの?」と言われてしまうのです。いかに自分が、日本という国について知らないかを思い知らされた経験でした。

酒井 海外で生活されたからこそ、気づかれたことだったのですね。