with コロナのニューヨーク
胃袋が満たされた私たちに、キョウコちゃんがまず説明し始めたのは、ワクチンについてだった。家族の年齢に合わせた接種方法などを非常に丁寧に教えてくれた。
「PCR検査はそこらへんでどこでもできるから、すぐにやって。一番近くはこのクリニック。予約なしで、直接ウオークイン(飛び込み)で入れるから。あとワクチン接種はすぐに必要だから、いますぐこのサイトから予約したほうがいいよ」
ニューヨークについてまだ数時間、正直、話の展開の速さについていけなかったが、でも3回目のワクチンをうたないと私も大学のキャンパスに入れないし、ワクチン証明書がないとレストランに入ることもできない。ワクチンやPCR検査は、この街で生きるために必須なのだ。コロナ対策についてスラスラ説明するキョウコちゃんは、王冠こそ被っていないが、ピザの箱を高く掲げた「自由の女神」のように一瞬、見えた。
翌朝、さっそく家族で、PCR検査と抗原検査を受けた。家の横のクリニックで無料だった。あれ? おととい、羽田空港で9万円払ったんだけど、と思っていたら、ピンク色の髪をした看護婦さんがやってきて、鼻や口の粘膜をとり検査は一瞬で終わった。頭がピンクなのはニューヨークっぽいが、10歳の息子はちょっとビビっていた。彼にとっては「自由の国」の初めての洗礼になった。
次の日、街を歩くとクライスラービルの美しい塔が遠くにみえた。マンハッタンを感じて感慨にふけっていると、その真下に色とりどりのPCR検査のテントがあった。目を凝らすと、ストリートには信じられない数のテントが立っていた。
「FREE COVID-19 TESTING」(無料でコロナ検査できます)と書かれ、その場で抗原検査やPCR検査ができた。「PCR検査はどこでもできる」とキョウコちゃんがいったのはこのことか。外国人でも旅行者でもいつでも検査できるそうだ。まさにwith コロナのニューヨーク。この2年、何度も夢に見たニューヨークにたどり着いたのだと急に実感した。