上皇・天皇に手紙が届くまで

現代だって、総理にお願いの手紙を書いても、そう簡単には届きませんよね。

それと同じで、天皇や上皇に読んでいただこうと手紙(文書の名前でいうと、手紙は「書状」。何かを訴える文書なら「訴状」)を書いても、とうてい雲の上の方には届きません。

じゃあどうするかというと、蔵人か弁官のもとに文書を差し出す。これとて、蔵人・弁官への正式ルートをもっている人だけが可能。一般人は門前払いです。

文書を受け取った蔵人・弁官は中味を吟味して、天皇(上皇)に判断を仰ぐ。それを踏まえて、天皇(上皇)の意思が表明される。

天皇の意思であれば、文書名は「綸旨」、上皇なら「院宣」です。ドラマ内で頼家が猿楽一座を介して依頼していたのは後者の「院宣」でした。

この説明を読んで、「あれ? 参議から太政大臣までのえらい貴族たちは何をしているの?」と疑問を持った方、鋭い! 

実は鎌倉時代を通じて、これら上級貴族の仕事はどんどん減っていくのです。

実際に朝廷の内実ある仕事を片付けるのは、上皇とその側近である蔵人、弁官。いまでいうと、社長と社長室のスタッフが会社の業務をてきぱきと遂行する。

専務や常務以下のおえらいさんは、おざなりの会議だけは催行するものの、中味のある仕事はやりません、でも依然として高給をとってます、という感じでしょうか。