修善寺に幽閉されて不平満々の頼家。近臣を付けてくれるよう嘆願した手紙を政子らへ送るもあえなく拒絶される(『少年日本歴史読本. 第拾參編』(萩野由之 編/博文館。国立国会図書館デジタルコレクション

 

小栗旬さん演じる北条義時、大泉洋さん演じる源頼朝ら、権力の座を巡る武士たちの駆け引きが三谷幸喜さんの脚本で巧みに描かれるNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(総合、日曜午後8時ほか)。8月28日放送の第33回「修善寺」では、政子(小池栄子さん)の次男・源実朝(嶺岸煌桜さん)を鎌倉殿とする新体制が始まり、北条時政(坂東彌十郎さん)が執権別当に就任。しかし御家人たちは派手に権力をふるう北条を徐々に敬遠、三浦義村(山本耕史さん)の忠告に義時(小栗旬さん)も苦笑します。そんななか、失意の源頼家(金子大地さん)は………といった内容が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第3回は「源頼家が上皇とのやりとりに猿楽の一座を使った理由」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

なぜ頼家は猿楽の一座に上奏を依頼したのか

33回において、修善寺に幽閉されながら「軍勢を率いて鎌倉を火の海にし、北条の者どもの首をはねる。このままここで朽ち果てるつもりはない」と執念を燃やしていた源頼家。

彼は、猿楽の一座に後鳥羽上皇への上奏を依頼していました。内容は「『北条義時を討て』という命令を出して下さい」というもの。

しかし、そもそもなぜ頼家は、上皇へメッセージを伝えるために猿楽の一座を使ったのでしょうか?

そこで今回は貴族社会の官職を簡単に見ていきながら、当時の「文書の動き」について解説したいと思います。