夫の実家ではお盆に家族が集まり、バーベキューをしたり花火をしたりするのが恒例行事だった。けれど、エイちゃんがお盆にいたことはない。独身の彼にとって、家庭を持つ兄弟たちと顔を合わせるのは肩身が狭かったのか。高校卒業後、逃げるように実家を出た後ろめたさなのか。今となっては知る由もない。

4年前も、いつものようにみんなで集まり、バーベキューを楽しんでいた。義母が「栄太もいればいいのになぁ。どうしているんだか、電話もよこさねえで」とぽつり。めったにエイちゃんのことを口にしない義母が珍しい。そう思いながら聞き流していた。

お盆が過ぎ、警察から夫に一本の電話が入った。「鈴木栄太さんのお兄さんですか? お話ししたいことがありまして」。

エイちゃんは自宅で、死後3週間以上経過した状態で発見されたという。いわゆる孤独死である。男性の一人暮らしながら荷物はきちんと整理され、まるで自分の死を覚悟していたかのような部屋だったそうだ。

長年銀座の料亭で料理人をしていると聞いていたけれど、体調を崩し、いつの間にか仕事も辞めていたようだ。享年50、早すぎる死だった。