イラスト:川原瑞丸
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今月は「休暇」について。休むのが下手だというスーさん。イベントの後に訪れた温泉宿で、家から離れることの大切さに気付かされたそうでーー。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

休暇に関して、私は諦めてばかり

私は休むのが下手だ。サボるのは大得意だというのに。

休みにも、質の良し悪しがある。30分くらい仮眠して、目覚めたら珈琲を飲み、気分転換に近所を軽く散歩する。これは教科書に載せてもいいくらい優秀な「休憩」。しかし、ソファに寝転びスマホを1時間見続けた挙句、首が痛くなって目がショボショボするようなのはダメな「休憩」である。もちろん、私がやりがちなのは後者だ。

休むとはつまり、積極的に心と体の疲れを癒やすこと。次の行動に備えて活力を養うこと。これが上手くできてこその大人。残念ながら、私にはそのセンスがない。

会社員を辞めたあと、私は8年ほど夏季休暇すらとらなかった。がむしゃらに働いていたと言えば聞こえはいいが、実際には休暇プランを立てるのが億劫で、サボりながら働いていただけ。その後、アジアンリゾートへ旅する楽しみを覚えたものの、同行者を失ってからは再び旅することを諦めた。

今年はコロナを患って、10日ほど物理的に家から出られなかった。幸い症状が軽かったこともあり、寝る時間も考える時間もたっぷりあって、私にしては上出来な休暇になったと思う。とはいえ執筆はしていたし、家から物理的に離れない限り、仕事と自分を切り離すのは無理だと諦めた。休暇に関して、私は諦めてばかりなのだ。