かぎ甚「初雁」

初という文字は、もちろん「初めて」という意味ですが、どこか清々しいニュアンスを含んでいます。

食べものの初ものをよろこぶ習慣はもちろん、「初月」「初嵐」「初萩」など、さまざまな風物にこの字をつけ、季節が変わりゆくさまを楽しむのは、四季の変化に富む国だからこそ育まれた感性なのかもしれません。

「初雁」という語もまた、その年初めて北の国から飛来してくる雁のすがたを表していて、秋の到来を感じさせる言葉の一つです。

まだまだ暑さの残る季節、のど越しのよい葛を使ったこの菓子は、葛にも、中のこし餡にも黒糖が入っていて、滋味深い味わい。

そして葛の中に百合根が潜んでいます。この百合根の白さが初雁を表しているという、風情ある秋の銘菓。

しっかりとした甘みが抹茶や煎茶とベストマッチなひと品です。