常に新たな不安を探す“不安中毒”

コロナという大きな悩みがあっという間に共有・拡散されたという事実。逆に考えれば、誰もが何かしらの悩みを持っていたい“不安中毒”だということなのです。

『近づいてはいけない いい人 - 一億総サイコパス社会の歩き方』(著:シークエンスはやとも/発行:ヨシモトブックス  発売:ワニブックス)

例えば、身体的に問題がある野生動物は、生き残れずに死んでしまいます。悲しいけれどしょうがない、と思うかもしれませんが、これを人間に置き換えると、急に違和感を覚えるでしょう。

その理由は、人間は宗教や神様といったような、何らかの共通認識を持ち、人道的かつ倫理に反する行動はしないようにしよう、仲良くやっていこう、と考えた唯一の生物だから。それでも野生の名残りとして、その群れからいつか自分が外されるのではないかと、不安を持ってしまうのです。

なんとなく悩んでいたい、いつも不安でありたいという気持ちは、誰でもどこかに持ち続けています。その感情が暴力を生み出してしまうし、それぞれの文化の中で魔女狩りなどといった人を傷つける行為が行われてきました。“次は自分の番かもしれない”という不安を抱くためです。

お金がたくさんあって、付き合う相手にも困らない、となっても、それでもまだ悩みを持つでしょう。

例えばコロナが終息し、世界中から戦争がなくなり、メディアも静かになるという平和な未来が近々訪れたら、人間は新たな不安を探すでしょう。

借金してしまったらどうしよう、結婚できなかったらどうしよう、地球が滅亡したらどうしよう……。新しい悩みがどんどん出てきます。そんな、起こるかどうかもわからない不安を常に持っていたいのです。