イラスト:浅田アーサー
高齢化とともに日本の認知症の患者数は増加し、厚生労働省の発表によれば、2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。誰にとっても身近なものになる中、周囲の人は不可解な言動に悩み、介護者による虐待事件につながってしまう場合も。「認知症の人が見ている世界を想像することで、お互いの心理的負担が軽減される」と、理学療法士の川畑智さんは言います。認知症の症状としてみられる、物が無くなったときに、周囲の人に「あなた盗んだでしょう」と言ってしまうのは、まだ自分が認知症であるという自覚がないからで――

●家族やケアする人が見ている世界

介護する側の負担

認知症の初期に多く見られるのが「物盗られ妄想」です。

財布や判子、通帳など大切な物を盗まれたと思い込み、介護者や家族に「盗んだでしょう?」と疑いの目を向けたり問いつめたりするため、介護する側はとても疲弊してしまいます。