70歳からは自動車教習所で実習のようなものが必要になるとのことで――(イラスト提供:イラストAC)
2022年に厚生労働省より日本人の平均寿命が発表され、男性の平均寿命は 81.47歳、女性は87.57歳とのこと。人生の中で、避けられない「老い」と、どのように向き合っていくべきなのでしょうか。日本初の女性競馬新聞記者となり、72歳になった現在もノンフィクション作家として活躍する吉永みち子さんが考える、老いとの付き合い方とは。70歳前後になると気になるのが、運転免許証の返納について。ワイドショーで、高齢者の運転の危険性を度々取り上げられる中、仕方なく返納してみると、思いがけないご褒美があったそうで――。

運転免許証の返納への道のり

運転免許を返納した。ニュースやワイドショーで、高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違って起こしてしまった事故が伝えられることが多くなり、その度に自分では運転に自信があっても、とっさの時の反射神経が衰えているのであると解説される。

高齢者もいろいろだよ……などと呟いてみても、もはや高齢ドライバーは路上の危険物だからさっさと免許を返納しろと言われているみたい。と、思うのは老人のひがみか……自分は自信があると思うのはもはや過信でしかないのか……とまあ、揺れる思いの60代。

運悪くというか免許更新がちょうど70歳で、これまでは運転免許試験場に行ってささっと更新出来たのに、70歳からは自動車教習所で実習のようなものが必要だという。

ま、とりあえず更新しとこうかと気持ちが傾いたところに、2019年春、池袋で高齢ドライバーによる悲惨な事故が発生。またもやワイドショーが高齢者の運転の危険性をいっせいに伝え続け、再び迷いが生じた。

そうこうしているうちに誕生日が迫り、返納の意思が固まり切らないので、近くの自動車教習所に申し込みの電話をしたところ、すでに満杯状態。実習の受け入れ可能な場所は、他県だったりしてものすごく遠い。

まだ仕事も忙しくて時間がとれない。そこに新型コロナという思いもよらない事態が発生。物理的に更新不可能になって、その結果返納のやむなきにいたったという主体性のカケラもない情けなさである。