子供がいつまでも自立をしない現代

数日後、「このまま突き進んでいたらやばかったかも。引き返して出直す」との電話。よっしゃ! と思わずガッツポーズ。

『老いを楽しく手なずけよう――軽やかに生きる55のヒント』(著:吉永 みち子/中央公論新社)

私は、子供と暮らすのは未成年の間だけと固く決意して、計画通りに一番下が20歳になった時に家から出して、晴れてひとりになったのである。

20歳までは親として扶養の義務があるが、成人したら後はお互いそれぞれが独立して大人同士の関係に移行する。そのために一緒に住まない。どこかで線を引いておかないと、ずるずると一緒に住んでずるずると親子のままになりかねない。

それは双方にとってよろしくないと思う。そのためには、物理的に距離をとることがいい。物理的に距離を置くことが、双方の精神的自立に一番の近道だと実感していたからだ。

昔……私が10代の頃は、みんな家を出てひとり暮らしをしたいと思ったものだ。

私は、母ひとり子ひとりで、家を出たいなどと言おうものなら「私を捨てるのか」という母の大反撃にあって、切なる願いは叶わなかった。私の母もそうだったが、昔の親はなんだかんだとうるさかった。門限に遅れると怒られ、着る物にもいちいち派手だの下品だのと文句を言われ、髪型にまで口を出される。

大人になりかけた頃には、これが我慢ならないものなのだ。ルールは自分で作りたい。だから早く家を出たい。反発をバネに独立する。親もまた経済的に余裕がない時代で、ひとり減れば助かるから、そう深追いはしなかったのだろう。