「いい年をした子供が戻ってきたら、居座られる危険性が高い。居座られたらどうなるか……」(イラスト提供:イラストAC)
2022年に厚生労働省より日本人の平均寿命が発表され、男性の平均寿命は 81.47歳、女性は87.57歳とのこと。人生の中で、避けられない「老い」と、どのように向き合っていくべきなのでしょうか。日本初の女性競馬新聞記者となり、72歳になった現在もノンフィクション作家として活躍する吉永みち子さんが考える、老いとの付き合い方とは。吉永さんが還暦を迎える直前、事業が上手くいっていない息子が、家に戻ってきたいと言い始めたそう。一人用の老後計画が崩壊してしまうと、断固拒否の姿勢を見せると――。

家に戻りたいと言う子供

ひとり暮らしの快適さに打ち震えながら毎日を自由気ままに犬と過ごしていた頃のこと。世にアラカンと言われていた還暦直前の私に、ある日一大ピンチが訪れた。

息子が「話があるんだけど……」と神妙な顔であらわれたのである。子供のしおらしい顔は、経験上、親の私にとってはおおむね望ましくないこととともにあらわれる。心の中に警戒警報を鳴り響かせながら、「何事だ!」と身構える。

自分の部屋と借りている店舗の家賃がダブルで、生活が大変だから家に戻ってきたいと言う。冗談じゃない。速攻で「絶対にイヤだ」と拒否したところ、キョトンとした顔をしている。どうぞどうぞと歓迎されると思っていたようである。

いい年をした子供が戻ってきたら、居座られる危険性が高い。居座られたらどうなるか……

私はさらに高齢化し、子供も比例して中年と化し、そのうちお互い老と老。そうなるともう離れようにも離れられない。私の一人用の老後計画が崩壊してしまう。