本連載がまとまった青木さやかさんの著書『母』

そこにいけば現実を忘れられた

東京に出てきてからも、なかなかパチンコがやめられず、借金がかさんでいった。お願いだからパチンコをやめてくれ、と言っていた、当時の彼氏には「もうやめた」と嘘をつき、バイトに行くと行ってはパチンコに通った。

パチンコ屋さんから出てくるところを目撃される度に彼氏と喧嘩になり、「もうやめた、信じて」と懇願し、「いや、信じられない」という彼に抱きつき、なし崩し的にベッドになだれこみ、翌日何事もなかったかのようにパチンコに行った。こんなことを繰り返すうちに、彼は部屋から出て行った。

ひとりぼっちになったけど、私にはパチンコ屋さんがあった。そこにいけば名前も知らないパチンコ友達がいたし、何しろ「仕事ない」「彼氏ない」「お金ない」現実を忘れられた。

もちろん私だって、ギャンブルをやめたかった。芸人としての下積みが長くて借金を背負ったわけではなく、ギャンブルがやめられなくて借金を背負ったのも情けなかったし、負けたときの喪失感と言ったらなかった。

ある日、パチンコを休み図書館に行って、なぜギャンブルがやめられないかを調べたことがある。その本には、リーチがかかると脳内麻薬が出て、その快感が忘れられない、とあった。なるほど確かに、確変中より、これは来るかも! というリーチの方が興奮する。これは一理あるぞ、と思ったが、だからなんなの? となり、その足でパチンコに向かった。