(撮影:宮崎貢司)
4年前、76歳のときに13歳年上の男性と再婚した映画監督の松井久子さん。結婚後、ふたりで暮らす終の棲家探しを一から始めたと言います。どんな苦労があったのでしょうか。(構成:菊池亜希子 撮影:宮崎貢司)

ふたり暮らしには広すぎる

今のマンションに引っ越してきて1年半が経ちました。ここは子育て世帯が多く、廊下やエレベーターでは若いご夫婦や子どもたちとすれ違い、挨拶を交わします。

近くの広場からはサッカーをする子どもたちの声が聞こえてくる。そんな日常を慈しみながら、先生(夫の思想史家・子安宣邦さん)とふたりで静かに暮らしています。

4年前、私たちは89歳と76歳で再婚し、その後2年弱、神奈川県・登戸の多摩川べりにあった彼の家で、義理の娘夫婦と一緒に暮らしました。

ひとり暮らしが長かった私は、結婚を後押ししてくれた彼女たちとの同居が嬉しく、台所が一つだったこともあって、毎晩、はりきって料理したんです。

そんなことがかえって居心地の悪さを感じさせてしまったのかもしれません。2024年3月に娘夫婦が家を出ていく形で同居は解消になりました。