ふたり暮らしにちょうどいいマンションのリビングルーム。テレビ周りの棚は、金沢八景の家から運んだ

思い出の品々とたっぷり向き合う

じつは私、今回が人生で17回目の引っ越しなんです。結婚、離婚での転居に始まり、子育て中は母に手伝ってもらうために実家のそばに移りました。息子が高校で海外に行ってからは、仕事に便利な都心を数年ごとに転々と。

賃貸だったり、マンションを購入したり、いろいろありましたが、仕事中心だった私にとって、住まいは単に寝に帰る場所でした。

一番長かったのが、17年間住んだ八丁堀のマンション。映画監督として国内外を行ったり来たりしていた時期で、東京駅にも空港にも出やすい立地が最大の利点だった。そんな生活のなかで5本の映画を撮り終えた頃、はたと気づくと70歳を過ぎていました。

ちょうど体力的に無理がきかないと感じ始めた頃でもあり、少しずつ家にいる時間が増えたとき、「私、こんなに空が見えないところで、暮らしていたんだ……」と気づいてしまった。

居ても立ってもいられず、眺めのいい部屋を探して、17年に神奈川県・金沢八景の高台に引っ越しました。もしかしたらこのとき私は、ひとりで人生をまっとうするための終の棲家を、無意識に求めていたのかもしれません。