「罪を犯したのは事実だし、過去は消せない。このことを受け入れたうえで深く反省し、経験を生かすことが僕に与えられた使命だと思っています」撮影:本社写真部
2022年10月4日、東京・大手町の日経カンファレンスルームで、「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」主催のグッド・プレス賞2020(雑誌部門)の授賞式が行われました。高知東生さんが自身の薬物依存について告白した『婦人公論』2020年1月28日号の記事を再配信します。


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2016年6月に、覚せい剤と大麻所持の容疑で逮捕された高知さん。妻(当時)の高島礼子さんは涙ながらに謝罪し、後に離婚を発表した。そして現在、高知さんは自助グループとの出会いを得て、自らの薬物依存体験と後悔を全国各地で語り続けている。執行猶予期間の4年が明けるまで、あと約8ヵ月。高知さんの心を支えているものは何なのか──。
(構成=丸山あかね 撮影=本社写真部)

自助グループに出会い、やっと見つけられた居場所

逮捕された瞬間に、「これで救われた」とホッとしたのを覚えています。女房を裏切り、女性と一緒にいたところに踏み込まれた。女房に対して最低なことをした僕ですが、そのときはもう、自力で薬をやめることができなかったから。このまま続けたらすべてを失うことになるとわかっていたのに……。脳が薬物の力で支配され、自分で自分をコントロールできなくなってしまう。僕は「薬物依存症」という名の病気です。

今も有名人の薬物事件のニュースを見ると、当時のことがフラッシュバックします。自業自得ですが、マスコミに追い回されたことがトラウマになっていて、さっき撮影されたときも、シャッター音を聞いただけでビクッと身構えてしまいました。

正直、「悪い夢を見た」と流してしまえたらどんなにいいか、と思います。でも罪を犯したのは事実だし、過去は消せない。このことを受け入れたうえで深く反省し、経験を生かすことが僕に与えられた使命だと思っています。

こんなふうに冷静にとらえられるようになったのは、2019年の2月に依存症患者が自らの体験を語り合う自助グループに出会い、「苦しんでいるのは自分だけではない」と知ったことが大きかった。9月には依存症予防教育アドバイザーの資格を取得し、現在は依存症予防イベントなどで講演活動をしています。

依存症当事者や家族の方の前でもお話しする機会が多いのですが、この活動に僕も助けられています。自分の体験を語ることはセルフカウンセリングの一環でもあるんです。

また、依存症の家族を持つ方々にふれ、別の角度から依存症問題を見ることができるようになったのは大きな収穫でした。パワーをもらえるのもありがたい。「家族を依存症から救いたい」と藁にもすがる思いで僕の話に耳を傾ける方々を目の当たりにして、自分のつまずきを価値に変えることができるかもしれないと考えるようになりました。

僕は今、自分の居場所があることに感謝しながら生きている。欲もプライドもない素の心で、一から人生をやり直すチャンスを与えられているのです。