手の届かない雲の上の存在

初舞台は1993年、月組の『グランドホテル』という公演でした。
まだどこの組にも所属していない「研一」の時です。
トップスターは、涼風真世さん。
私の初舞台は、涼風真世さんの退団公演でした。

そもそも初舞台生は稽古場で皆さんとご一緒するという時間があまりないため、
実在するのか!?というくらいトップスターさんは雲の上の方でした。
お話しした記憶も皆無…。
近付く事など恐れ多いという感じでした。

涼風真世さんは、フェアリータイプな男役さんで、
華奢で中性的な、何とも言えない魅力のある方でした。
ガタイのデカい私には、「フェアリー」という響きさえも遠く感じました。
フェアリータイプな方が、最後の公演で死を間近にした鬼気迫る主人公を演じ
まったく違う色を出されていて、
ものすごい演者だったんだなぁと後になって思いました。

涼風真世さんはとにかく雲の上のお方。
かすみを食べていたに違いありません。
トップスターとは、手の届かない雲の上の存在だということを教えてくれた方でした。