NYでのJUJUさん

ニューヨークで学んだ、いい意味での自分勝手さ

もうひとつ、常に姉と比べられる生活から解放されたくて、本当は中学卒業したらすぐに留学したかったんですよ。でも、「まだ教えておかなきゃいけないことがあるから、家にいなさい」って、本当に抑圧された環境で過ごしていたので、そんな状況からとにかく自由になりたかったんです。その点、ニューヨークなら私を知っている人は誰もいないので、誰かと比べられることもない。ここでなら、自分の人生をゼロからやりなおせるに違いないって。

私がニューヨークに行ったときは、ちょうどクラブ文化の全盛期。現地では週7日間クラブに通って、そこで知り合った様々な人たちのツテで、スタジオのバックコーラスに参加したり、インディーズで歌手デビューすることもできました。日本のレコード会社からデビューしたのはニューヨークに渡って10年目。その後の6年間、ニューヨークの住まいはキープしていたので、トータルで18年間暮らしたことになりますね。

ニューヨークで学んだことは、いい意味での自分勝手さかもしれません。とくに、私が住んでいたダウンタウンで暮らしているアーティストたちは「昼間からブラブラして、何をやっているんだろう?」みたいな人たちばかり。「あと15分で行くよ」と言われても、実際に来たのが4時間後なんていうことも。それでも、誰も怒らない。「彼はこういう人で、こういうことをするために時間が必要だから」って、誰もがその人の生き方を認めている。自分が本当にやりたいことがあって、それに責任を持っているのなら、自分の生きる速度やスタイルは自分で決めなきゃいけないということをニューヨークの人たちに教えられたような気がします。

10代の頃まで周囲の大人たちに抑圧されていたこともあり、もともとの私は人の目をめちゃくちゃ気にするタイプなんですよ。だから余計に、ニューヨークで自分勝手な大人たちに出会って、目からうろこ! 大人なのに自分の好きなように生きていいんだと思ったら、肩の荷が下りて、ものすごくスッキリしましたね。そうか、私は私のままでいいんだ。無理に誰かと足並みを揃える必要はない。自分が一番好きなスタイルで、誰にも迷惑をかけずに、自分のやりたいことにだけ心を注いで生きて行けばいいのだということは、ニューヨークに行かなければわからなかったと思います。