大人による大人のための歌を歌っていきたい
歌手として、これから目指しているのは、大人による大人のための歌を歌っていきたいということです。
昭和の時代って、大人が大人のための音楽を作っていたでしょう。夜8時の歌番組で子どもが聴いちゃいけないような曲もいっぱいあったけど、そういう音楽があったから、当時の私は「やっぱり大人って素敵だな」と思えたわけですし。
ユーミンの歌が好きだったのも、そこに描かれた「都会の大人」の姿に憧れたから。だからこそ、自分も歌手になったからには、大人のための歌を歌い続けて行きたいと思っています。
今回のアルバムで、ユーミンが私に書いてくれた「鍵穴」という曲で、その思いがいっそう強くなりました。ユーミンはとってもやさしい人なので、私の歌い方について、これまでいっさいのアドバイスを受けたことはありません。でも、この曲をいただいたときに、「あなたのだらしないやさしさ」という部分を歌うのは難しいと思うよと初めて忠告していただいたので、そうか、この部分がユーミンが思い描く大人の歌のキモなんだなと。これまでつきあった、「だらしないヤツやろくでなし」への思いをすべて込めて(笑)、この部分を歌いました。
ニューヨークに長くいすぎたせいか、プライベートでは、今、和の文化をおさらいするのがマイブームです。子どもの頃に習っていた茶道をもう1回やりなおそうと思ったり、お師匠さんに来ていただいて、着物の着付けを習ったり。中でも、一番ハマっているのが書道です。子どもの頃からのへたれで緊張しいな性格が今も続いているので、硯に向かって墨をすり、邪念と雑念を鎮められるようになりたいな、と。落語も昔から大好きなので、落語家さんに弟子入りしたいという夢もあります。
この年齢で弟子入りを受け入れていただけるかどうかはわかりませんが、「あの人、節操ないね」と思われることが、今はまったく怖くないんです。先ほどもお話したように「いつか」がなくなってしまった経験があるので、余計にそう感じるのかもしれません。「JUJUって、自分のやりたいことをなんのテレもなくやっている人なんだね」って思っていただけたら本望です。
5月からは、松任谷正隆さんの演出で、全国を回って43回のライブを行います。「あなたはね、将来、ユーミンと一緒にアルバムを作ったり、正隆さんの演出でライブツアーをやるんだよ」と、タイムスリップして子どもの頃の私に教えても、「絶対、ウソ!」って信じてくれないと思います(笑)。それでも、幼い頃から自分が思い描いてきた夢物語を、こうしてお2人が現実のものにしてくださった。「JUJUって、本当にユーミンが好きなんだなぁ」って思いながら、今回のアルバムを聴いていただけたら嬉しいです。
●松任谷正隆氏、松任谷由実氏 Wプロデュース ユーミン曲のカバーアルバム『ユーミンをめぐる物語』が3月16日にリリース
https://www.jujunyc.net/yuming/