世界最高の刑務所・ラー刑務所
以上のように、サン・ラーのアーケストラは女人禁制を筆頭に規律が重んじられており、楽団の面々がサン・ラーの思想から逸脱するのは許されないことだった。規律を破れば懲罰が与えられた。
クローゼットに閉じ込めるという直接的なものから、あえて違反者のみ高級ホテルに泊めさせ、最高の食事と車を与えたりしつつもバンドと一緒に行動させず、演奏もさせないことで孤立を深めさせて反省させる「最高のもてなし」(?)という陰湿なやり口もあり、追い詰め方はいろいろだ(2)。
ヤングクイストが以下のように語る通りである。
「彼はミュージシャンたちの信条など求めていなかった。音楽が一体どこから来たのか、どのように響くべきか、そして何をなすべきか、彼らが感じることができればよく、サン・ラーはただその理解を求めていた(3)」。
こうした自由のなさを、サン・ラーは「ラー刑務所」と恐るべき比喩をする。
「私の刑務所は世界最高の刑務所であり、アーケストラの面々はここで物事を学ぶ。私の表現したいことはこうだ。彼らは刑務所にいる、そして彼らはどこに行くこともない、それは不可能だからだ(4)」。