樋口 そこでいよいよ様子がおかしいと、介護保険が満20年を迎えた20年1月、私たち「高齢社会をよくする女性の会」は、上野さんたち他団体と一緒に「介護保険の後退を絶対に許さない!!」と銘打った緊急集会を開きました。利用者をはじめ、ケアマネジャー、ホームヘルパー、デイサービス事業者、在宅医、訪問看護師など、現場のみなさんが集って。その訴えは切実でした。

上野 介護保険はもともと、高齢者家族の在宅介護支援が設計の意図でしたが、この20年で家族の形は大きく変わり、65歳以上の高齢者のうち夫婦世帯が約3割、単独世帯が4分の1。全体の半数を超えています。今後ますます増える「家族介護力がない高齢者の在宅生活」を支えるには介護保険が不可欠なのに、サービス低下と保険料の負担増はゆゆしき問題です。

たとえば、政府の目論見としていま、わかっていることの一つが、「介護保険の軽度者はずし」です。先ほどもお話しした2005年の法改正で要介護1を要支援2に移したのがその始まりと言えます。14年には要支援1・2の訪問介護とデイサービスが介護保険からはずされ、市町村が行う「総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)に付け替えられました。

樋口 市町村から委託を受けている事業者、地域の住民団体やボランティアなどが担い手となるわけですが……。

上野 はたして受け皿があるのか。むしろ、サービスの低下が懸念されます。19年には要介護1・2も介護保険からはずして総合事業に移すという案が出されました。これは介護現場や利用者からの反対の声が強く、いまだ決定には至っていませんが、政府はいずれ、要支援とともに要介護1・2も介護保険からはずし、3・4・5の3段階くらいに簡素化することも考えていると思います。

樋口 つまり、要介護度が重度でないと介護保険は使えなくなる?

上野 そう、重度中心のケアにシフトしようというのでしょう。