「せっかくいい制度として生まれ落ちたのに、3年ごとの改定ではサービスの切り下げと利用者負担増の連続でした。」(上野さん)

3年ごとの改定で何が起きているのか

上野 介護保険は今年で22歳ですが、私たち介護保険ウォッチャーから見れば、制度と運用の面では《被虐待児》の歴史だったと言えます。せっかくいい制度として生まれ落ちたのに、3年ごとの改定ではサービスの切り下げと利用者負担増の連続でした。使い勝手が悪くなり、利用者からも介護職からも悲鳴が上がっています。

樋口 保険料の見直しなど、制度の改定が組み込まれているのは、サービス改善のためですよね。

上野 本来は……。ところが、改悪に次ぐ改悪になっているのが現状です。そこには、社会保障費の削減、なかでも高齢者の社会保障を抑制する方向に、という政府の意向が見えています。

樋口 2000年の制度スタート時は、各地で利用者の掘り起こしが行われましたね。

上野 ええ、初年度だけは。主な改悪の例を挙げますが、早速3年後には利用抑制に転じ、その後も、介護報酬減額や同居家族への利用制限などが続いた。05年の法改正では、従来の要介護1を介護保険からはずし、要支援2へ。

06年の介護報酬改定では、在宅介護従事者も施設従事者も減額、個室特養(特別養護老人ホーム)には居住費などのホテルコスト負担が導入され、各種の事業者には加算がついたものの、どれも利用者の負担を押し上げました。

14年、特養への入居資格条件が要介護3以上に厳格化されるなど、相次いでサービスが切り下げられた。