「求人はあっても人が集まらない。それほど介護の仕事はワリに合わない職種だということですね。」(樋口さん)

上野 生活援助はマニュアル化できません。なぜなら、台所一つとっても家によって違うし、生活様式も異なるので、プロとしてのスキルが必要なのです。待遇については、ホームヘルパーは多くが登録制で、待機時間はゼロ査定、つまり無給です。訪問先間の移動時間も無給ですし、交通費も自分持ち。

いま、ホームヘルパーの方たち3人が国家賠償訴訟を起こしています。制度設計に根本的な欠陥があり、トータルで見ると最低賃金を割っていて、労働基準法も守られていないと。

樋口 そうした労働環境だから、常に人手不足なんですよ。

上野 有効求人倍率(求職者1人につき求人が何件あるかを示す指標)を見ると、コロナ前(19年)で13倍でした。ホームヘルパーは不況業種と言われていて、好況のときは人が出ていき、不況になると参入してくる。では、コロナ後はどうなったかというと、15倍に上がっているんです。

樋口 でも、求人はあっても人が集まらない。それほど介護の仕事はワリに合わない職種だということですね。負担も大きく、責任も重いのに。

上野 それなのに、ヘルパーさんたちの訴えをみているととても慎ましい。「生活援助と身体介護を一本化してほしい」「そうして報酬を3000円台にして、ゆっくりサービス提供できたら、よい介護ができる」と。しかし、政府は聞き入れません。