施設介護の現場で予測される未来
樋口 施設の介護職の人たちも知恵と工夫で運営してきたのに、限界がきていると聞きます。
上野 施設介護も危機的です。とくに悲鳴が上がっているのは、人員配置基準。介護保険法で定められた職員の最低人数があるのですが、現行の「3対1」から「4対1」に変えることが検討されています。3対1というのは、入居者3人に対し、常勤換算で職員1人を配置するということ。
常勤職とは一日8時間労働週休2日制ですから、24時間シフトの施設では実質「9対1」以下になります。それでは十分な介護ができないと、実際は基準配置よりも職員を増やしている施設が多いのです。けれど、包括方式で施設に入ってくるお金は決まっているので、人員が増えた分、職員の分配、つまり給料を下げるしかなくなります。
また、施設は夜間などワンオペレーションが多い。現行の配置基準ですら難しいので人員を増やしてきたのに、さらに4対1にしろというのでは、職員の負担はますます増大します。
樋口 人材不足を、労働条件の改善ではなく、配置を薄くする形で解決しようとしている? そういえば、施設で事故のニュースが増えています。
上野 職員削減で一人ひとりの業務負担が大きくなれば介護の質が低下し、ネグレクト寸前になるかもしれません。人手不足対策として、カメラを使った夜間の見守りシステムや、ベッドからの転落を防止する離床センサーなど、ICT(情報通信技術)化と言われる最新機器の導入を進めているところもありますが、それでは利用者に寄り添った介護ができない、という現場の声もあります。