作りかけになった凧
なぜ、途中になってしまったのか? 初孫・悠人の凧はめぐみに贈れることを期待し、ほぼ完成させたが、没交渉が続いたので、渡すことをあきらめたのだろう。だから絵を入れることも止めてしまった。舞の分は早々と渡すことを断念。だから骨だけになったに違いなかった。
愛娘や孫と会えない祥子のやるせない胸中を、作りかけになった凧で表したのである。祥子本人の言葉やさだまさし(70)のナレーションによる説明は一切なかった。
五島編が終わり、東大阪市に戻った後も行間と余白は駆使された。第3週の第13話。浩太が父親から継いだ岩倉螺子製作所の経営が行き詰まった。浩太は隣でお好み焼き屋「うめづ」を営む幼なじみの梅津勝(山口智充)にこぼす。
「仕事があらへんのや。このままやったら、うち潰れる」
浩太が工場を継いだのは14年前。めぐみと駆け落ちした年だ。それまでは大企業で飛行機を製造する仕事をしていた。このため、こうも漏らした。
「なんのために飛行機あきらめたんやろ」
弱気になっていた。工場もあきらめかけていた。