偶然がほとんどない

舞の「きらきらしてるなぁ」は歌人の桑原さんらしいセリフだった。短く、美しく、そして含蓄に富んでいた。ちなみに桑原さんは2011年1月に皇居・宮殿で行われた「歌会始の儀」で入選者10人のうち1人に選出されている。その技量は並大抵ではない。

桑原さんの脚本の傑出した点はまだある。偶然がほとんどない。ドラマに偶然は避けられないが、それが多いと観る側は萎える。現実味がなくなる。一方、桑原さんの紡ぐ物語は必然が続くからリアリティがある。その一部は次の通りだ。

「祥子とめぐみが14年も没交渉で、祥子と舞が初対面なのは、めぐみが駆け落ちしたから」「めぐみと祥子が再会できた理由は舞が五島で療養するため」「舞が空を好きになったのは五島でばらもん凧に興じたから」「模型飛行機をつくり始めたのは空が好きである上、会社の経営危機で沈んでいた浩太を元気にするため」――。

模型飛行機作りによって飛行機も好きになった舞が、第3週の第15話で浪速大学航空工学科に入ったのも自然に受け止められた。人力飛行機サークル「なにわバードマン」に入ったのもうなずけた。

桑原さんの脚本は考え抜かれている。出演陣の1人から聞いたところ、「今後の脚本も素晴らしい」そうだから、舞の大学生編以降も期待できる。