出演陣の好演にも注目

出演陣の演技にも惹き付けられる。第3週まで少女・舞に扮した浅田芭路の演技力は相当なものだ。かわいらしい子供をごく自然に演じた。

五島の暮らしで寝坊をした時の慌てぶり、模型飛行機を完成させたので浩太に見せようとした時の得意げな表情。いずれも真に迫っていた。また可憐だった。

浅田から舞役をバトンタッチされた福原遥はいつもながら巧みだ。内気で繊細な舞のキャラクターをそっくりそのまま引き継いだ。だから違和感を抱かせない。テレビ朝日『声ガール!』(2018年)、などに主演してきた実績はダテじゃない。

日本を代表する劇団の1つである「劇団青年座」の絶対的エース・高畑淳子はさすがだった。例えば舞から手作りの貝殻風鈴を贈られた祥子は一瞬意外そうな顔をして、すぐに満面の笑みになった。やっと孫と会えた喜びをあらためて噛みしめる老女の胸中を、表情と仕草で巧妙に表した。

ベテランの域に入りつつある永作博美と高橋克典も好演している。永作は五島に舞を置いてきためぐみの揺れる心象風景を繊細に表現した。めぐみは舞を残したことは本人のために良かったのだと思う半面、母親として冷たかったのではないかと軽い自己嫌悪にも陥っていた。その胸の内を時折見せる悄然とした顔付きで観る側に伝えた。

高橋が演じる浩太は零細企業の2代目だが、元エリートサラリーマン。その立場と経歴をうまく体現している。浩太はやさしく、働き者だが、創業経営者のような泥臭さはない。第15話までは「うめづ」で経営者仲間と飲んでいても溶け込んでないのが分かった。演出側の狙い通りに違いない。

『舞いあがれ!』を観ていると、朝ドラが「連続テレビ小説」であることを再認識する。質の高い小説を少しずつ読んでいるような感覚になる。