脚本の素晴らしさ
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』は出色である。ドラマの良し悪しを決めるのは「一に脚本、二に役者、三に演出」というのがセオリーだが、3つとも抜群に良い。
特に、歌人としても名高い桑原亮子さん(42)による脚本は珠玉と言って良い。出演陣、演出陣もおのずと力が入るだろう。
桑原脚本のどこが素晴らしいのか。まず説明的な場面がほとんどないところ。説明抜きでも描こうとしていることが伝わってくるのは行間での表現が豊かだからである。また、説明しないことで余白をつくり、登場人物たちの心の機微を観る側に想像させている。小説もそうだが、心の機微はいちいち説明する類のものではない。
具体例を挙げたい。東大阪市に住む主人公の岩倉舞(福原遥、少女編・浅田芭路)は小学3年生の時、たびたび発熱していた。どうやら心因性のものらしい。
それを治すため、舞は一時的に母・めぐみ(永作博美)の郷里である長崎県・五島列島で祖母の才津祥子(高畑淳子)と暮らす。第1週の第3話から第2週の第10話までのことだ。