広々とした外を眺める女性の後ろ姿

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ『窓辺の女性』1822年 ベルリン・旧国立美術館蔵

次はドイツ・ロマン派のフリードリヒによる『窓辺の女性』。薄暗い、閉塞感のある室内から、広々とした外を眺める女性の後ろ姿が印象的だ。

風のない夏の日差しは強く、彼女の耳を薄赤く透かしている。目の前の川では、帆船がすべるように通ってゆき、向こう岸のポプラの木々がさんざめいている。

この絵は見る人にさまざまの思いをかきたて、評論家もさまざまな論を展開しているが、素直に見れば、まだ家庭内に押し込められていた19世紀前半の女性の、広い世界への憧憬というのが妥当であろう。まだ窓を開けただけで、這い出るには至っていなくとも。