貧困へと至る流れ
そして貧困には3つの流れがある。
(1)統合された貧困:ここでは貧困は自然現象だ。第二次大戦直後はまさにこれにあたる。
(2)マージナルな貧困:貧困は自然な存在ではなく、一部の人のみが貧困におちいっている。高度成長期がまさにそう。
(3)降格する貧困:貧困層がどんどん拡大して社会全体が不安になっている状態。
日本は今、まさに(3)の「降格する貧困」状態にある。なかなか思うように仕事に就けない人が増えてくる。家族や近しい人に助けてもらって、なんとか生活している。一方で貧乏の状態にある人は、公的な社会保護に支援を求め、その数も増大する。
「降格する貧困」はポーガムによれば、1990年代から始まっていた。不安定雇用が増え労働市場が変わってきて、それに対して何ら有効な政策がとられてこなかったことに起因する。
多くの日本人は、自分もその貧困層になってしまうのではないかと思っている。特定の富裕層を除き、みんながそう思っているのだ。一億総中流なんてもはや夢だ。誰でも貧困になりうる。
特に女性が貧困になりやすいのは、女性の労働者は非正規労働が多いからだ。非正規雇用者の70%が女性で、男性労働者の賃金を100とした場合、70 でしかない。これが短期労働者になると、50になる。実に男性の半分の賃金でしかないのだ。
しかも戦後の日本社会は、女性は”誰かに依存しながら生きる”というモデルを作り出した。未婚のうちは親頼み、結婚すれば夫頼み。高齢になれば夫の遺族年金か、子ども頼み。このモデルに沿って政策が実行されてきたのだ。
依存先のないシングルマザーや、親が亡くなった未婚女性、死別による単身女性などは対象外だったため、貧困率が高い。女性の貧困は政策によって作られてきたとも言えるのである。そこへやってきた新型コロナウイルスは、貧困や精神的な生きづらさを抱える女性たちを直撃した。
※本稿は、『コロナと女性の貧困2020-2022――サバイブする彼女たちの声を聞いた』(著:樋田 敦子/大和書房)の一部を再編集したものです。
『コロナと女性の貧困2020-2022――サバイブする彼女たちの声を聞いた』(著:樋田 敦子/大和書房)
コロナを生き抜く女性たちの声!「私、大丈夫ですかね」
2020年から現在まで、新型コロナウイルスは全世界で猛威を振い、その影響は貧困や精神的な生きづらさを抱える女性たちにも多大な影響を与えました。本書では、この2年間半に起きた事件や事象などを織り込みながら、コロナ禍で翻弄され続けた女性の実情を映し出しています。